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インフルエンザは制圧できるのか 青野由利 要約、あらすじ

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はじめに

100年前にはインフルエンザはその原因さえわかっていなかった。今日、ここまで研究し、解明されたのは研究者の熱意と努力の賜物です。人類は4度の新型ウィルスによるパンデミック(世界的大流行)を経験している。1918年スペイン風邪、1957年アジア風邪、1968年香港風邪2009年H1N1インフルエンザです。そして2020年の新型コロナウィルスです。インフルエンザについての解説、戦い、対抗策が書かれた内容です。

第1章 豚から人へ

生物の遺伝子解析が飛躍的に進化したのは20世紀末に行われた「ヒトゲノム計画」のおかげです。
人間の染色体に刻み込まれた30億の遺伝暗号文字を解読するために遺伝子解析を自動化する技術が開発された。そのおかげで遺伝子解析のスピードは飛躍的に高まった。人間の遺伝子に比べるとウイルスの遺伝子の大きさは天と地ほども違う。インフルエンザウイルスのゲノムを構成する暗号文字の数は約13000に過ぎない、人のゲノムの約20万分の1だ。これならあっという間に1のウイルスが解析できてしまう。コンピューターを駆使すればウイルス同士の関係やウイルスの由来を導き出すことができる。

ウィルスは遺伝子としてDNAを持つものと、RNAを持つものがある。タンパク質の違いによりA.B.C型の3タイプがある。人間に流行してるのはA型とB型で新型インフルエンザのパンデミックを起こすのはA型です。インフルエンザのおおもとを辿ると鳥ウィルスに行き着く。インフルエンザウィルスは種の壁があり鳥のウィルスは種の壁を越えることはないが、なんらかのメカニズムで壁を越えて人、豚、馬でインフルエンザの流行を起こす。インフルエンザの特徴は変化しやすいことです。毎年違うウィルスが誕生する。これはウィルスが複製する時のエラーによるものです。新型インフルエンザ出現に豚は重要な役割を果たします。豚がインフルエンザウィルスの遺伝子組み換え容器になり、ウィルスの貯蔵庫であるからです。豚は種の壁が薄いのです。欧州アジアと北米の間で生きた豚のやりとりが様々な豚インフルエンザウィルスを混ぜ合わせていることは「ネイチャー」の論文も指摘しています。

重症度を決めるもの

1.ウイルス自身の病原性と感染性
2.感染者側の弱点
3.病気と闘う社会の能力や弾力性

重症化しやすいのは糖尿病、喘息、免疫不全、心臓病、慢性疾患、肥満などの持病を持つ人それに妊婦です。

インフルエンザウィルスの病原性、毒性を決めているのは細胞表面にあるヘマグルチニン(HA)の糖タンパク質。HAはどの種に感染するかを左右する。
それとインフルエンザウィルスのポリメラーゼの遺伝子のPB2でこれは撒き散らしを左右します。PB1、NS1も病原性を左右する。

新型インフルエンザが新型と言われるゆえんは、人に免疫がないということです。だから多くの人が感染し、世界中に広がる。

第2章 スペイン風邪

スペイン風邪の由来はスペインが発祥ではなく、第一次世界大戦中に米国で起こり、英国、フランスの軍隊へと蔓延した。当時は戦争中だったので情報統制でスペインは参戦してなかったのでスペインの流行が世界に知られるようになったからです。1920年まで続いて全世界6億人が感染し、2000万〜5000万人が死んだ。

化学者はウィルス研究の為、墓を掘り返します。アラスカの墓地をスペイン風邪のウィルスをめざしてのことです。遺体からサンプルを採取したがスペイン風邪のウィルスを復元することはできなかった。が1997年に再びチャンスが巡ってきて墓を掘り返しサンプルを採取し、スペイン風邪のウィルスを復元に成功した。これはパンデミックを理解する上で重要な情報を提供した。
スペイン風邪は1918年に起こり、最も被害が大きかった。世界的に見ると感染者の致死率は2〜2.5%で現在の季節性インフルエンザの死亡率が0.1%程度と考えると20倍以上の致死率です。

ウィルスは細菌と比べて10分の1〜100分の1程度の大きさしかない。小さすぎて普通の顕微鏡では見ることができない。細菌と違うのはウィルスは自分だけで増殖できず、常に他の生物の助けを借りて増えます。アジア諸国は豚と鶏を一緒に飼う風景は珍しくないので豚、鶏、人の感染が容易の起こる。

第三章 鳥から人へ

1997年8月香港で鳥インフルエンザに感染して3歳の男の子が死亡した。たちまち感染者が増えた為香港政府は国内のニワトリを全て殺処分を決定した。これにより人への感染を食い止めたと評価あったが対応が遅かったとの指摘もあった。一旦1998年1月に収束宣言したが、5年後再びこのウィルスが出現し、現在まで続いている鳥から人への感染の始まりです。2003年キクガシラコウモリが宿主のSARSコロナウィルス出現。

第四章 抗ウイルス剤

兵庫県佐用町と茨城県つくば市にスプリング8という放射光施設は物質の構造や性質を調べたりできる。こうした施設はインフルエンザウィルスの立体構造を明らかにし、抗ウイルス剤の開発に役立つ。
インフルエンザ薬としてタミフル、リレンザが有名だが、その昔はアマンタジンという薬があったが耐性ウィルスが出てきて薬の出番はなくなった。
オーストラリアのマークフォンイツスタインのグループはスプリング8で得られたデータをもとにザナミビル、商品名リレンザを開発したがちょっと弱点があったので改良してオセルタミビル、タミフルが完成した。日本は一番のタミフルの大量消費国です。その後インフルエンザウィルス全体の半数以上がタミフル耐性を獲得した。その後再びリレンザが注目される。リレンザの耐性ウィルスが出現する恐れは必ずあるから新しい抗ウイルス剤を開発する必要がある。

タミフル異常行動問題があるがタミフルと異常行動の因果関係ははっきりしない。

ワクチンにも限界がある。インフルエンザワクチンには感染そのものを防ぐ効果は期待できない。一つの理由はインフルエンザウィルスが呼吸器に感染し、そこで発病する性質があるからです。

第六章ワクチンをめぐるジレンマ

ワクチンはタマゴからつくります。インフルエンザワクチンを大量に作るにはまず元になるウィルスをたくさん増やす必要がある。現在そのために使われているのはそのまま育てればヒヨコに孵る発育鶏卵だ。ウイルスを鶏卵に感染させることで大量に増やしそれを元にしてワクチンを作ります。ワクチン作りはタマゴに支配されてきたので、タマゴ不足が起きた時のために鳥以外の生物の細胞で作る努力がなされています。ベロ細胞と呼ばれるアフリカミドリザルの腎臓、犬の腎臓細胞、ヨトウガの細胞など研究しています。

現在のワクチンは体内に抗体を作る仕組みです。この抗体はウィルスの表面のタンパク質にくっつき、他の免疫機構と協力して排除する。しかしウィルスの表面タンパク質が変化すると効果がないのでウィルスの表面の変化に合わせてワクチンを作らなければならない。それでも大丈夫なように変異しないウィルス内部のタンパク質をワクチンの種とした万能ワクチンの研究もしている。

インフルエンザウィルスは鳥、豚、人の間を渡り歩きながら次々と姿を変えて免疫をすり抜けていく。ワクチンで終生免疫が得られるような感染症ではない。根絶の対象となるウィルスではない。インフルエンザは文明病という見方もある。現代人の胃袋に応えるため豚や鶏を大量に飼育する、そこでウイルスの交雑が起こり人にも感染する。その人間が世界を移動し感染を広げる。ウイルスから見れば人も豚も鳥も自分を増やし世界各地に運び、時には交雑によってリフレッシュさせてくれる便利な乗り物ということになる。インフルエンザの振る舞いは予想がつかない。

まとめ

インフルエンザの歴史からインフルエンザと人間のすべての出来事、戦いが余すことなく解説されていて、感染のメカニズムも何回もわかりやすく説明しています。顕微鏡で見えないほど小さく、生物とさえ言えないインフルエンザ自信も生存するために変化し、必死であることがわかります。タイトルの「制圧できるのか」は難しいが取り組まなくてはならないという意味があり、これからもインフルエンザとの戦いは続く。専門書位に詳しい内容で文章も分かりやすく非常に面白いです。

著者 青野由利

目次

第1章豚から人へ
第2章スペイン風邪
第3章鳥から人へ
第4章抗ウイルス剤
第5章ワクチンを巡るジレンマ
第6章パンデミックワクチン最前線
第7章21世紀の戦い

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