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日本の総理学 中曽根康弘 要約

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はじめに

戦後政治の現場をつぶさに見てきた稀代の政治家、中曽根康弘が国を憂い、真に自立した国家のヴィジョンを語ります。政治、人生観、宇宙観まで中曽根哲学の真髄が分かります。

まえがき

戦前の政治と最近の政治状況は奇妙に符号している。ファシズムになる心配はないが、国家の基本政策をないがしろにして、大衆の顔色ばかり気にするポピュリズム政治になっている。国家のリーダーたるものは確たる信念と哲学に裏打ちされた信念を持ち、普段から目測力、結合力、説得力を磨いておかなければなりません。

日本の総理に捧げる言葉

大いなる志を遂げんとする政治家には、毀誉褒貶はつきものである。真の政治家は時代時代の宿命を負って行動し、時流におもねらず、国家百年の大計を自分自身の犠牲において断行し、その評価を後世の史家に託して消え去っていくのである

日本の総理学 p.6

第一章 総理の条件

1942年、香川県高松の海軍部で特攻隊の連絡係をしていた中曽根氏は瀬戸内海の西に原子爆弾の光を直に見ました。大東亜戦争の敗北を目の当たりにして、一日も早く国力を回復し、再び世界一の国に立て直して挽回しなければならないと思った当時の中曽根氏は復員後、警視庁に勤務していましだが、辞職して1947年衆院選に立候補しました。すると28歳でトップ当選しました。

中曽根氏の理念は海軍時代に学んだ「荒天のときには風に向かえ」という言葉です。大自然の変化にどう対応するかの大事さを体で分かっていました。

総理大臣はこうと信念を持ったら断行する。政治というのは結果主義で、理想や目標が素晴らしくても結果が悪ければ落第です。

第二章 国家とは何か

国家があってこそ市民の幸福や世界の平和が成り立ちます。老人の保護、年金や医療、介護、などは国家が按配しているから運用できている。

日本は二千年もの歴史を経て出来上がった自然的国家です。一方、旧ソ連や中国のような共産主義、アメリカは移民の人達が契約によって作り上げたような人工的国家とは違います。グローバリゼーションの時代になっても日本的な道徳律なるものは守りながらも、窓を開けて新鮮な空気を取り入れて国際化の時代を進むべきです。

敗戦後、アメリカ的民主主義を押し付けられていますが、今こそ自前の憲法を作るべきです。

マスコミも自らの影響力を自覚して、平衡感覚をもった報道を心がけてもらいたいです。

三島由紀夫氏のような独断で自衛隊を政治目的に利用する考え方は、その動機がいかに純粋なものであっても、破壊思想は断固、排除されなければならない。

近頃の政治家は全てが表面的、深い歴史観もなければ哲学、信念も見られない。なので国民の精神も貧困になっている。

日本社会が原理、原則を自分達で獲得し、価値基準をしっかり持つべきです。

戦後、マッカーサーの指示で作られた憲法や教育基本法は軍国日本を解体するため世界的に普遍性のある抽象的なものにし、日本の個性を意識的に排除したのです。なので自己犠牲や他利、慈悲、抑制といった徳の心は育たないし、個人単位の自由や権利ばかりに重きをおくようになった。よって社会は放埒に流されるままになって空虚な実態を曝け出している。教育は伝統、文化を尊び、これを子孫に伝えながら夢と理想を持ち日本人として大切な個性を育むことを重視しなければならない。

第三章 憲法改正試案

憲法は安全保障、政治、経済、文化、教育など、おおよそ基本的枠組みが規定されています。しかし、そこに「国家」や「国民」という言葉、歴史や伝統の匂いが感じられないものになっています。時代に合わせて社会意識が変化してきているので新しい憲法を作り直さなければなりません。

現憲法での天皇は「象徴」より一歩踏み込んだ「元首」として伝統的な権威を持たせた方がいいです。

女性天皇問題は国民世論の動向を見ながら政治が判断すべき問題です。

自衛隊は防衛軍であると明確に謳うべきです。

首相は国民が直接選挙で選ばれるようにしたほうが良い。

憲法改正条項はもっと弾力性のあるものにした方が良い。

私学への助成などに公金を支出していますが、憲法第八九条違反なので直すべきです。

国民の義務は「教育」「勤労」「納税」ですが新たに「国を守る義務」「安寧秩序の維持」「良好な環境の維持」「緊急事態における協力」などを追加すべきです。

第四章 安全保障の原則

湾岸戦争の時、人質になってイラクに抑留されていた日本人72人を解放するためにバグダッドへ乗り込みフセイン大統領と直接交渉し、人質を無事連れ戻しました。

小泉首相が北朝鮮拉致被害者を帰国させたのも、もっと外務省を使って下準備をして慎重にすべきで、小泉君のやり方は危ういと指摘しました。さらに外相には重量感のある人物を起用すべきですと進言した。

北朝鮮とは拉致問題と核・ミサイル問題を解決しないと国交回復してはいけない。

中国はしたたかで、長期的な計画で物事を進めているし、先手先手の外交は侮れない。

中国と台湾は時間をかけて和解する形で解決にもっていくべきです。

日本、中国、韓国とは定期的にトップ会談を開くことは大変重要です。そして東アジア経済共同体ができるとアジアの安全保障体制を築くうえで非常に重要な要素になる。アメリカはNAFTA、ヨーロッパはEUを作り上げたので、東アジアでも同じような地域機構を作るべきです。

第五章 教育の要諦

首相はできるだけ早く天皇の靖国神社ご参拝が可能となる方策を考えるべきです。

教育基本法は憲法同様、マッカーサーによって日本解体政策としてつくられました。これは歴史、伝統、文化、社会、国家道徳、家庭を真正面から取り上げていないために今日、秩序のない国家になってしまいました。日本人自身が血を流し、汗水流して作った憲法でないので、そんなところに真の教育が成立するわけがありません。公の考え方が生まれてきません。そして、左右に偏らない真ん中の教育に直していく必要があります。個人の欲望、利己が肥大化する文明病を、教育の力でどう治すかが、日本の未来にとって最優先の課題です。

政治権力は文化に奉仕するためにある。これが中曽根氏の持論です。政治は国の礎を築くためにあり、政治はそのためにのみ、尽力すべきです。

第六章 リーダーの仕事

風見鶏とも呼ばれた中曽根氏は西郷隆盛も攘夷だったり外国語だったり統一国家にするためには状況にあわせて態度を変える。歴史的な大事業を成し遂げた人は皆、風見鶏だったので、この、風見鶏の愛称は一度も恥だと思ったことはありません。日本が国際社会に伍していくには、大局を見据えて、小局に拘らないリーダーが必要です。

中曽根氏のお手本とした政治家は原敬です。

今のリーダーや政治家はなぜか自らの国家についての哲学を国民に語ろうとしない。クラゲのようにフワフワと浮遊しているのが気がかりです。世界のリーダーは自国に対して確固たる哲学や国家観を持って行動している。

小泉首相のポピュリズムな政治には違和感を感じる。

米国のCIA、イギリスはMI6、イスラエルのモサドというように日本も内閣直属の情報機関をつくるべきです。

日本人は東洋思想、仏教的思想に回帰するのが自然です。万物との共生を願い、地球の愛護と人類の平和と家郷の文化をお互いに尊重しあう、これからはそうした目的意識を持って国際連合や人権、資本主義のあり方を変えていかなければなりません。

著者 中曽根康弘 1918年生まれ 1982年、第71代内閣総理大臣

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